口腔外科
口腔外科
口腔外科は、口腔(口の中)、顎(あご)、顔面に現れる疾患を対象とする診療科です。親知らずの抜歯や、唇や歯茎、舌にできた「イボ」の切除、三叉神経痛に代表される神経疾患や交通事故やスポーツなどで生じた外傷なども治療対象としています。
また、お口の中にも「がん」ができることはあまり知られておりませんが、舌や歯茎に「がん」ができることもあります。がんと良性腫瘍は見分けが難しく、歯科医師でも誤診することがあります。また、口腔がんもほかのがんと同じで早期発見、早期治療が鉄則です。私は大学病院で様々な「がん」を診てきた経験から、日ごろから見落としがないように歯だけでなく歯茎や舌も診るように心がけております。
以下のような症状がある方はご相談ください。
日常的に起こりやすい症状でも、詳細な検査を行うことで重大な病気の早期発見につながることもあります。お口まわりで気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
頬にできた扁平苔癬です。しみたり、出血を伴うこともあります。両側にあることもしばしばです。症状がでれば塗薬で症状を抑えます。難治性の為、対処療法がメインになります。
舌の横にできた白板症です。口腔潜在的悪性疾患のひとつで、癌化する可能性があります。広範囲だったりしこりがあるときは一部ですでに癌化している可能性もあるのですぐに組織検査が必要です。
上あごにできた口腔線維腫です。急激に大きくなったり癌化することはほとんどありません。
舌の横にできたアフタです。いわゆる口内炎です。歯がとがっていることが原因でできることもよくあります。舌にいつも歯が当たっている状態はよくないので少し削って滑らかにします。通常、2週間以内に消失します。2週間以上治らない口内炎は口内炎ではない可能性がありますので、歯科医の診察が必要です。
義歯性潰瘍は入れ歯が原因でできる口内炎です。合ってない入れ歯を使うことでできます。そのため、義歯を使い続けると治りません。入れ歯を調整すれば自然に消失します。
舌の横の奥の方にある葉状乳頭と呼ばれる正常組織です。舌の表面はよく見るとデコボコしていたり、血管が浮き出ていたりします。そのため、異常だと勘違いする場合もあります。
歯肉炎は歯茎だけが腫れている状態です。歯茎が腫れることで骨まで溶けている状態が歯周炎です。
瘻孔は歯の根の先で感染しているときにあらわれる排膿路(膿がでていく通り道)です。原因となっている歯がありますので、歯の根の治療を行います。
上記のようなものが口の中にある時は歯科医の診察をお勧めします。
写真の引用元)「有名芸写真能人の舌癌に関するマスコミ報道が歯科口腔外科の初診患者数に与えた影響」より
名倉安紀1), 神田修治1), 板東祥太1), 畑中彩花1), 高岡一樹1), 野口一馬1), 山根木康嗣2), 岸本裕充1)
1)兵庫医科大学 歯科口腔外科学, 2)病理学 病理診断科部門
兵庫医科大学医学会雑誌 46(2): 135-141, 2022.
私は大学病院に勤務していた期間が長いことから必然的に難しい抜歯を引き受けることが多く、たくさんの症例を経験させていただきました。特に親知らずの抜歯は患者さんに身近な処置で、すでに経験された方も多いのではないかと思います。中には痛みと不調が続くといった苦い経験をされた方もいるのではないでしょうか。
当院ではCTを撮影しより安全にまたスピーディーに抜歯を行っています。また、痛みに配慮した抜歯をおこなっているので、処置後には皆さま比較的安心して帰られます。また、抜歯後の出血や感染などの対応も責任をもって行います。
「親知らず」は、奥歯の一番奥に生えてくる永久歯で、「第3大臼歯(だいきゅうし)」とも呼ばれています。一般的に生えてくる時期は10代後半から20代前半ですが、まれに30~40歳頃に生えてくる場合もあります。
はじめから「親知らず」がない方や上下左右の4本が揃っていない方など、個人差があります。また、まっすぐに生えてくるとは限らず、斜めに生えたり、埋まったままだったりすることもあります。
「親知らず」は、必ず抜かなければならないというものではなく、痛みがない場合や周りの歯や歯列に影響がない場合は、無理に抜く必要はありません。抜歯が必要な症状としては、「歯ぐき(歯肉)の腫れや痛みを繰り返している」「頻繁に食べ物がつまる」「手前の歯や『親知らず』が虫歯になっている」「『親知らず』が他の病気の原因になっている」などが挙げられます。
抜歯は、周囲の神経や太い血管の確認が必須となります。歯科用CTで「親知らず」を立体的に把握し、神経や血管の位置を考慮しながら行います。当院では日本口腔外科学会の認定医である院長が歯をそのままにしておくデメリットと抜歯したときのメリットなどを説明し、抜歯のご希望があれば当院で抜歯させていただきます。ただし、出血のリスクや神経損傷のリスクが高いときは大きな病院を紹介させていただくこともありますのでご了承ください。
「親知らずの抜歯」は、詳しい診察が必要となりますので、お悩みの際は気軽に受診ください
一般的に抜歯は、虫歯や歯髄炎、歯周病などが進行し、歯の温存が不可能になった場合に行われます。近年の歯科医療では、可能な限り歯を残す潮流がありますが、一方で、抜歯を必要とするケースも少なくないのが現状です
無理に歯を残すことで、痛みが継続して残ることもあります。最終的な決断は患者さんとの相談で決定しますが、保存することをお勧めできない歯に関しては丁寧に説明しますので、納得の上で処置されることを望んでおります
多くは部分麻酔下で行われますが、入院し全身麻酔下で行うケースもあり、状態によって抜歯方法も様々です。また、血液疾患で出血が止まりにくい症例や他臓器の疾患の影響を考慮して、抜歯を避けるというケースもあります。
当院では親知らずだけでなく、全身疾患がある方の抜歯も万全の態勢を整えて行っています。
口の粘膜(舌・頬・口蓋・口底・口唇・歯肉など)に、炎症や腫瘍、アレルギー症状などが出現する疾患をいいます。口腔内の粘膜は刺激を受けやすく、常在菌も多く存在しています。
そのため症状が変化しやすいという特徴がありますが、「腫れ」、「口内炎」、「変色部位」などを入念に診断し、適切な治療へとつなげています。
口腔腫瘍は、大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられます。良性腫瘍には顎骨という硬組織に生じる歯原性腫瘍(エナメル上皮腫、歯牙腫など)、軟組織に生じる非歯原性腫瘍(乳頭腫、線維腫、血管腫など)があります。
一方、悪性腫瘍である口腔がんは、発生部位によって分類されており、舌がんや歯ぐきにできる歯肉がんが代表的です。
口腔がんの発生要因は数多くありますが、代表的なものは喫煙と飲酒です。喫煙者の口腔がんによる死亡率は、非喫煙者の約4倍といわれており、重度の飲酒もハイリスク因子と考えられています。不潔な口腔衛生状態やヒトパピローマウイルス(HPV)感染なども原因とされています。
口腔がんのできやすい場所は舌・歯茎・頬の粘膜です。中高年齢の方は、毎月セルフチェックを行い少しでも気になることがあれば、診察を受けることが大切です。
上記のような症状がある人はすぐにご連絡ください。上記の症状は必ず出現するわけではありません。気になることがある人は遠慮なくご相談ください。安易なセルフチェックで診断が遅れると治療が困難になってしまうこともありますので注意が必要です。
顎の関節とその顎に関連する筋肉(咀嚼筋)の病気です。「顎が思い通りに動かずに、食べ物が噛みにくい」「顎を動かすとカックン、コッキンといった不快な音がする」「痛みで口が開かない」といった症状が認められますが、顎だけでなく、片頭痛や肩こり、腕や指のしびれ、鼻や耳にも不快感が生じることもあります。
原因としては、ストレスを含む精神的な要因、噛み合わせの異常、夜間の歯ぎしりやくいしばり、頬杖(ほうずえ)などの癖、解剖学的な問題などが考えられています。
症状は多岐にわたり、軽度から重度まで個人差が大きいという特徴がありますが、重い症状の場合、放置すると進行して顎の機能が破壊されてしまうこともまれにあります。症状があればお早めの受診をお勧めします。